製品の変色等の解析とは
金属製品や樹脂製品などの変色やシミは、非常に目立つため不具合になることがあります。その原因は化学薬品の影響によるものや、極微小な付着物によるものなどがあります。その原因を調査する方法として実際に変色やシミを分析することで、その変色原因が分かることがあります。今回、原因を調査した例を紹介します。
分析事例
分析事例1:樹脂のシミ
樹脂製品の一部にシミのように茶色く変色した現象が発生しました(図1)。変色の原因は微小な金属粉が付着したと推定してSEM/EDXによる反射電子像での観察(図2)及び元素分析(図3)を行いました。反射電子像では金属など重い元素を含有していると明るく、樹脂など炭素を主成分とした元素は暗く観察されます。その反射電子像で観察した結果、明るく観察された点が無数確認されたことで金属などの重元素を含有した物質の付着と推測しました。その明るい箇所を点分析した結果、Fe(鉄)、及びO(酸素)が検出されました。この結果よりシミの原因は錆びた鉄の微粉が付着したものであることが確認されました。
図1.光学顕微鏡写真
図2.SEM写真(反射電子像)
図3.元素分析
分析事例2:樹脂製製品のシミ
樹脂製の製品にシミが確認されました(図4)。シミを確認するためSEMで観察した結果、長さ数μmの針状の物質が多数付着していることが確認されました(図5)。針状の物質をFT-IRで測定した結果、ナイロンを代表としたアミド化合物の赤外吸収スペクトルが確認されました(図6)。切削などによって生じた微粉が付着してシミ状になったと推測されました。
図4.光学顕微鏡写真
図5.SEM写真
図6.赤外吸収スペクトル
分析事例3:金属の腐食
真鍮(銅と亜鉛の合金)製の製品にシミが確認されました(図7)。シミの原因は酸などによる腐食と推定し、酸の種類を特定するためシミの個所をSEM/EDXによる反射電子像で観察(図8)しました。腐食が進んでいると考えられる箇所を元素分析(図9)した結果、Cl(塩素)、Zn(亜鉛)と酸化を示すO(酸素)が検出されました。シミの原因はClを含有した酸(例えば塩酸等)により真鍮の亜鉛が腐食した可能性があると考えられました。
図7.光学顕微鏡写真
図8.SEM写真
図9.元素分析
分析事例4:セラミック製品の穴
セラミック製品に微小な異物と考えられる箇所が確認されました(図10)。先ずは、正常箇所と異物とみられる箇所をSEM/EDXで観察と元素分析を行いましたが元素の差異は確認されませんでした(図11)。そこで、レーザー顕微鏡によるプロファイル測定で高低差を確認した結果、異物の付着は見られず凹みがあることが確認されました(図12)。このように、一見すると異物が付着しているように見られる場合でも、高低差が確認できる顕微鏡を使用することで付着物であるか又は、凹みであるかを判断できます。
図10.光学顕微鏡写真
図11.SEM写真
図12.レーザー顕微鏡写真
分析事例5:金属変色
銀の板の表面に変色(図13)が発生しその原因について、FE-SEMを使用して分析を行いました。加速電圧20kV(図14)では表面のコントラストが確認されませんでしたが、6kV(図15)ではシミのようなものが確認されました。加速電圧を下げて観察することで、より表層の状態の差を確認することができます。
図13.光学顕微鏡
図14. 加速電圧:20kV
図15.加速電圧:6kV
加速電圧6kVで300倍に拡大観察(図16)した箇所をEDXで元素分析(図17)した結果、シミの箇所ではCu、Sが検出されました。
銀の板を変色させた原因はCu、Sの化合物が原因と推測されます。
図16.SEM300倍
図17.元素分析
分析の流れ
情報収集
観 察
分 析
結果のご報告
弊社ではお問い合わせ頂いた際に変色の状態など差し障りない限りお伺いしております。その情報を元にシミや変色などの観察を行い、適切な分析機器を駆使し原因調査を行っています。
情報収集
情報収取では以下のようなことをお伺いすることがあります。
> 試料が保管されていた環境
→空調がある部屋にあったのかなど
> 発生率はどれくらいか。
> 熱履歴があるか。
> 前工程はどのようになっていたのか。
→化学薬品を使用した処理がおこなわれていたのか。
> 時間の経過
→製造されてとれくらい経過しているのか
環境アシストではお客様からの情報と分析の結果から、変色の原因解明を行っています。製品の不具合にお困りであればご相談ください。