有機物の定性分析

調査・解析業務

チャック付きポリ袋に含まれる滑剤の分析

分析のサンプルなどを入れて我々にお送りいただく時に活躍するチャック付きのポリ袋ですが、分析対象物質によっては稀に問題となる場合があります。
現在様々な用途に使用されているポリ袋のうち、特に汎用品であるチャック付きポリ袋の表面に滑剤が存在する可能性が有るためです。
一般的にポリエチレン(PE)製チャック付きポリ袋表面に存在する滑剤の分析をFT-IRで行ないました。
測定方法はメスでポリ袋の表面を薄く削りとりダイヤモンドセルで薄片化後、顕微透過法で赤外吸収スペクトルの測定を行いました。
以下にポリ袋表面のスペクトルとポリ袋の基材のスペクトル、そして、ポリ袋表面-ポリ袋の基材の差引きしたスペクトルを示します。

差し引きを行なったスペクトルのライブラリ検索結果を次に示します。

差し引き分析の結果、脂肪酸アミドと考えられるスペクトルが検出されました。
脂肪酸アミドは樹脂やゴム製品の表面滑りを良くする外部滑剤又は離型剤として使用される化学物質です。
しかし、赤外吸収スペクトルのライブラリ検索だけでは脂肪酸アミドであることは確認できても化合物の特定までは行なえませんでした。
検出された脂肪酸アミドがどの様な物質であるかを確認するためには、GC-MSやLC-MSなどの質量分析による更に精密な分析を行う必要があります。